イクメンはなぜ出世するのか
世間ではイクメンは出世しないと思われているようですが、逆です。
イクメンは出世しないという調査結果はありません。少なくても私は見たことがありません。イクメンは出世するという調査結果はあります。
イクメンが出世するのは、相関関係(=出世するような人がイクメンになるということ)じゃないの?と思う方もいるかもしれません。
私もそうでした。
家庭でも仕事でも、たいていは社会性の高い人の方が成功します。
家庭はボロボロだけど、仕事はバリバリというケースはあまりなく、仕事で成功する人は円満な家庭を築きます。
しかし相関関係ではなく、因果関係(=イクメンになったことで、出世する)もあるようです。
イクメンが出世するのは、男性に多く分泌され、攻撃性につながるテストステロンが減少するからだと考えられます。
テストステロンは子供と過ごすことで減少します。テストステロンが減少すると攻撃性が低くなり、利他的になります。
「自分が!自分が!」「他人に負けるものか!」という利己的な思想だった人が、他の人や組織の利益にまで視野が広がり、ひいては出世すると考えられます。
平和な時代にはイクメンが増える
子供がいると利他的になるのは、その方が子孫を残しやすいため、進化的に考えても合理的です。
外部からいつ攻撃されるか分からないような社会では、テストステロンが高い戦士の存在は心強いかもしれませんが、平和な環境ほど協調性が求められ、イクメンが活躍するといえます。
平和な現代日本社会では、家庭でも職場でもイクメンが活躍するというのも頷けます。
そして実際に、イクメン家庭ほど子供が生まれています。父親が家事・育児をしない家庭で第二子がいるのはたった1割、父親が休日に6時間以上の家事・育児をする家庭では約9割です(厚生労働省調査)。
子孫の繁栄が生物の大きなテーマであるという側面からは、イクメンになることが人生の成功に寄与するといえます。
だからできる男性ほど本能的にイクメンになるのでしょう。
イクメンになる人とそうでない人の違い
どういう人がイクメンになれるのでしょうか。
重要になのは、テストステロン全開の利己的な生き方から、利他的な生き方に人生をシフトするだけの柔軟性や精神的な強さがあるかどうかです。
デキル男ほどイクメンになるのは、精神面が成熟していること、また、好奇心が旺盛で変化に柔軟に対応できることを考えると当然の結果です。
そして、人生を変える一歩を踏み出す人に、進化は手をかしてくれます。
つまり、積極的に子供と過ごせばテストステロンを減少させることで、利他的になり、育児が得意になり、やりがいを感じるよう導いてくれるのです。
例えば、自分の趣味の時間を削りたくないという思いが弱まり、子供のために、家族のために喜んで時間を割こうと思えるようになります。
イクメン猿に学べ!
高崎山自然動物園では、他の群れとの抗争がなくなり平和になったためか、イクメン猿が出現したという記事があります。
ニホンザルの世界では雄が子育てにに関わることはないため、非常に珍しいことだそうです。
社会の変化にあわせて、自身も変化した柔軟性のある雄猿の姿だと思います。あるべき姿というのは置かれた環境によって異なり、大切なことは柔軟に自身を変えることです。
そういった適応能力の高さで我々の祖先は生き延びてきました。
現代日本でイクメンが求められるのは、平和であることに加えて、子育ては母親ひとりではできず、その上、母親も仕事をもつ人が増えたからです。
どれだけやればイクメンといえるのか?
イクメンの定義ですが、ここでは、家庭での役割を果たし、家庭の一員として認められる父親とします。どの程度の育児参加でイクメンといえるかは環境によって異なります。
子育てにはあまり関わらず仕事を優先したい人は、それができる環境を実現すれば可能です。
まずは、仕事の重要性を理解し、尊敬してくれ、さらには自身は専業主婦がいいというパートナーと結婚すること。
そして、ベビーシッターや家政婦を雇って、母親以外の家事・子育て人員を確保することです。母親を経済的に自由にするため、一生暮らしていける資産を贈与するか、自由に使わせるようにします。(経済的に束縛すると関係が悪化します)
母親に重い負担を負わせず、短い時間でも濃密な親子関係を築けば、「パパはお仕事がんばって!」と思われるでしょうし、家族の中に居場所がなくなることもないでしょう。
しかし、このパターンは社会的にかなり成功している層に限定されるので多くの人には現実的ではありません。母親が専業主婦であるだけなら、平日の朝晩、少なくても休日は家事や育児の分担が求められるでしょう。
共働きなら共に子育てする
現代では共働きが当たり前になっているので、多くの父親には相応の負担が求められます。
しかしながら、日本の男性は一般的に家事も育児もしません。なぜなら、育児や家事は女性がやればよいというモラハラ文化に浸食されているからです。
普通に考えれば、女性が働いて、さらに家事も育児もワンオペでするというのは異常なことです。でも、その異常なことを当然と考える男性が多いのが日本です。
自分が何をすべきか考え、家庭の運営にコミットしようという気持ちになるのは、やはり柔軟なマインドをもった男性なんですね。で、そういう人はやっぱり出世する。
ちなみに、少しでも育児の負担を軽減したいなら、母親の実家のそばに引っ越しをするのがおすすめです。
私の知り合いには、土曜日は毎週おばあちゃんに子供を預けているという方がいます。おばあちゃんに頼れれば、母親も父親も負担が軽くなり、自由な時間ができます。
さらに、子供がおばあちゃんと過ごすことは知能の発達によいといわれます。
イクメンのすすめ
祖父母や兄弟姉妹、親戚、ご近所さんなど、子育ての手がたくさんある時代は終わりました。また、男性ひとりで十分に稼ぐことは難しく、仕事をしたい女性の意志が尊重される時代になりました。
このような現代日本においては、大多数の父親は、家事や育児から逃れることはできません。
逃げれば家族の中で居場所を失うか、家族を失います。
他にやりたいことや趣味、仕事もあるでしょうが、母親がどれだけの自由時間をもっているか考えてみてください。
母親が主婦や時短勤務であっても、子供とのんびり家にいるわけではありません。むしろ逆です。子供が小さければ、趣味なんてまったくできません。自分の体調不良で病院に行くことも困難です。トイレさえ自由にいけないのです。孤独感も強くなります。
私が保育園に預けて仕事をするようになって感じたのは、仕事の方が自由に行動できるということです。自由にトイレに行ける!コーヒーを飲める!休み時間を利用して病院に行ける!ランチでおしゃべりできる!という解放感に衝撃を受けました。
ですが、会社を出ると、帰ってからの家事の段取りやタイムスケジュールを頭の中で組み立て、家に着いたら子供を寝かせるまで息をつく間もなく家事と育児の連続です。
父親の自由時間が欲しいのなら、母親も自由時間を持てるようにすると家庭が円満になります。
育児をすることに気が進まない人、何をしたらいいのかわからない人は、まずはできるだけ子供と過ごすことでテストステロンを減少させてみましょう。
愛情ホルモンといわれるオキシトシンも子供と触れ合うことで徐々に増えていき、イクメンのオキシトシン濃度は母親と同じレベルに到達します。(母親のオキシトシンは出産のときに大量に分泌されます。)
子育ては、人生を充実したものに変える力がある
突然ですが、今の仕事は生涯現役で続けられるでしょうか。そうでない場合、退職後も取り組む人生の目標を持っているでしょうか。
多くの人にとって仕事は、人生をかけるほどのことではなく、日々の生活のために漫然と働いているものです。しかし、仕事は苦痛で休日が待ち遠しいと思っている人すら、実際には仕事中の方がやりがいを感じているという調査があります。
早く休みになって欲しいと思いながら、いざ休みになると何をやったらいいか分からないというジレンマを感じる人も多いのでは。それは、仕事の方が集中し、充実した時間を過ごしやすいからです。集中して取り組むことで、充実感や成長につながるフロー状態になります。
多くの男性にとって家事や子育てでフロー状態になるのは、仕事よりはるかに難しいことでしょう。
プレミアムフライデーといわれたところで家に帰りたくない人がいたり、無駄な残金を好んでする人がいるのは、家にいてもフローできることがないからです。仕事の方が手っ取り早くフロー状態になり、時間をつぶせます。
しかし、それでいいでしょうか?
生活を充実した意味のあるものにするのは、人生を貫く大きな目標をもつことだといいます。よくあるケースでは、子供時代や若い頃の苦痛や挫折を通して生涯の目標が心に刻まれるケースです。
指の手術から医師を志した野口 英世みたいに。
でもなかなか目標をもてず、漫然と生きている人も多くいます。私もそうでした。大人になってから人生の目標を見つけるには、何か事件が必要です。しかし事件はなかなか起きません。
そう、子供が生まれるまでは。
子供が生まれて、生活が激変すると、これまでとは違った価値観が芽生えます。おそらく、ホルモンの影響もあるでしょうが、自分が変化するのを感じます。そして、人生の目標を見つけることになるかもしれません。
人生の目標ができると、仕事や家族との関わりも、その目標を通じて違う視点から見ることができるようになります。より意味のある人生が始まるきっかけになるかもしれません。
私自身も子供を育てるなかで人生の目標を見つけ、一歩ずつ進んでいるところです。漠然と見ていたテレビや目的のない旅行に興味がなくなり、やるべきこと、やりたいことが増え、時間があっという間に過ぎるようになりました。
大人に残されたほとんど唯一の自分を変えるきっかけ、それがイクメンへの道だと思います。
イクメンを目指す父親のパートナー(母親)へ
一般的に女性の方が育児の適性があります。
多くの母親にとって、父親の育児の能力はものすごく低く感じるでしょう。なぜもっとうまくできないのか?なぜ当然気づくべきことに気が回らないのか?そう思う母親も多いでしょう。
また、女性は出産時に愛情を感じるホルモンであるオキシトシンが大量に放出されますが、父親は赤ちゃんと触れ合う中で徐々にオキシトシンが増えていきます。
そのため、父親の赤ちゃんへの愛情が弱いように思えるかもしれません。
しかし、大柄な男性が小柄な女性に同じだけの荷物を持たせないように、育児が苦手な男性に同じことを求めるのは生産的ではありません。
同じ寝室で寝る、家にいるときはなるべく子供の世話をやる(不備があっても責めるのはぐっとこらえる)、その他の家事も任せてみる、など、気長にイクメンへの道につきあいましょう!