よく聞くけれど無駄な育児アドバイスに「甘やかす」のはダメだけど、「甘えさせる」のは必要、というものがあります。「甘やかす」のは親の都合で、「甘えさせる」のは子供のためになるという意味不明な解説が伴うパターンが多いです。
こんなことが書いてある育児書や、もっともらしく解説する育児アドバイザーがいたら真に受けてはいけません。
そんな人、嫌じゃない?
「妻を甘やかすのはダメだけど甘えさせるのはよい」とか真剣に考えている夫がいたら、ナニサマなんだと思いませんか?モラハラの臭いすらします。というか、モラハラでしょう。
友達が「あなたを甘やかすことは、あなたのためにならないのでお断りしたいけど、甘えたいときはいつでも言ってね」とか真顔で言いだしたら、急いで距離をおこうと思いませんか。
そういう言葉に気味悪さと反発を感じるのは、あなたの行為を「評価」した上で、対応を変えてやろうという上から目線の考えだからです。なぜパートナーや友人にされると嫌なことを、子供には平気でできるのでしょうか。
しかもそれが、子供のためになるなんて、恩着せがましく、厚かましいにも程があります。
子供の行動を判定する過保護・過干渉型育児はもうやめましょう。
親も子もひとりの人間
親と子供といえども人と人との付き合いです。親は教師でも神でもありません。子供とよい関係を築くためには、子供を一人の人間として尊重することが必要です。
大人が尊重しあってコミュニケーションをとっているのと同じように、子供のことを尊重して接することが大事です。友人に対して失礼なことは、子供に対しても失礼です。
親は甘やかすとか、甘えさせるとか、あなたのためだとか、失礼極まりない上から目線の思考を持たなくていいのです。いや、持たない方がいいのです。
そんなことを考えるから親子関係がうまくいかなくなります。子供だって、上から目線で接してくる人には反発したくなります。
親の気持ちが置き去りになっている
よく育児書に、たくさん抱きしめてあげましょう(=甘えさせましょう)みたいなことが書いてあります。
そういうときにフォーカスしているのは子供の気持ちばかりです。子供の不安な気持ちをうけとめてあげましょう、とか。親の気持ちについては、あまり書かれていません。そのため、そういう育児書を見ると、親の気持ちよりも子供の気持ちを重視しなければいけない印象を受けます。
しかし、子供の状況だけでなく、親の心理状態によって、子供への態度が変わるのは普通のことです。にんげんだもの。甘えとか甘やかしという考えが害になるのは、親の気持ちが置いてきぼりになるからでもあります。
子供が親に対して何らかの行動や欲求をした時に、受け入れるか受け入れないか決めるのは、親の気持ち次第でいいのです。親も尊重されるべき一個人です。
その行為が甘えかそうでないか客観的に評価する必要はなく、あるいは、子供のためになるかならないか子供の立場で考える必要もありません。
子供は自分の中に成長する力を持っています。親が子供のためになることをいちいち考えて自分の行動を変えなくても、ちゃんと成長します。むしろ、親が努力しても無駄です。
それに親が本当は快く思ってないのにうわべだけ甘えさせても、子供だって良い気はしません。親がよかれと思って気持ちを隠せば隠すほど、がんばってよい親を演じれば演じるほど、子供は親が何を考えているか分からず、心を開かなくなります。
だって、そんな友人やパートナーがいたら、距離をおくでしょう?
なぜ親は子供から大事にされないのか
親の気持ちを表さないと、当然ながら、子供は親の気持ちを尊重することができません。そんな親が、甘えだとか甘えさせるとか、「評価」しながら接してくるので、子供には反発心が生まれます。
その結果、子供が大人になる頃になっても、親子が尊重しあう関係を築く築くことができません。親を軽んじるか、恐れるか、どちらかになりがちです。
大人になっても、親に辛辣な態度をとる人って割りとよくいますよね。
「育児」は「育自」などと、親が変わらなければいけないというプレッシャーをかけるアドバイスをする人もいますが、親も子も、ありのままを受け止める関係を築くことが大事です。
親ががんばっても子供の成長には関係ない
甘やかすとか、甘えさせるとか、なぜ親がそこまでがんばるかというと、子供のすこやかな成長を願うからです。
親は、甘やかすと子供のためにならないのではないか、甘えさせないと愛情不足になるのではないか、という強迫観念のようなものがあるわけです。
しかし、残念ながら親がどんなにがんばっても、親が意図する影響を子供に与えることはできません。このことは、科学的に証明されています。つまり、無駄になるか、前述したようにむしろ親子関係を害します。
親が教えられるのは、日常の物理的な危険を回避することくらいです。あとは子供の集団の中ですべて身につけます。子供を指導したり、勇気づけて自己肯定感を育まなくてはいけないというのは、徒労に終わる考えです。そんな影響力を親は持っていないのだから。
つまり、親が目指すのはただひとつ。子供とよい関係を築くことだけです。よい関係というのは、どちらかが一方的にがまんするものではありません。立場が上とか、下とかもありません。
人類に反抗期はなかった
伝統的な社会には反抗期はないといいます。
反抗期くらいの年齢になるとすでに大人扱いされるというのもありますが、そもそも伝統的な社会では親が子供に何かを教えることがほとんどないので反発しようがないからだと考えられます 。
子供がいつまでも子供扱いされるようになって反抗期が生まれたわけです。しかし、現代社会でも反抗期が不可避というわけではありません。
子供に何かを教えようとか、子供を親の理想の状態(甘えられる子、愛情が満ちたりた子)にしようという上から目線で接するのをやめること。親の気持ちをオープンにすること。そうすれば、子供がやたらと反発する必要はなくなります。
現代社会では親が必要以上の役割を果たそうとして空回りしている状態といえます。親がやるべきは、子供に何かを教えることではなく、親がいなくても学べる環境を用意してあげることなのです。
幼児なら保育園や幼稚園に行かせればよく、小学校になったら放課後に友達と遊べる環境があれば、学ぶべきことを学びます。