アメリカのジャーナリストが育児に関する論文を寄せ集めた本です。著者がどこまで信頼できる論文を選定することができるのかという点は気になります。論文は膨大にあり、信ぴょう性もそれぞれで、結果が反するものもあるためです。
タイトルには、「絶対いいと断言できる」とあるのに、本書を開くと、「たとえ研究結果が繰り返し立証されてもなお、自分の子供に該当するとは限りません」という注意書きから始まります。
ならばタイトルで‟断言”すべきでないのでは……。
ちなみに原題は、『Zero to Five 70 Essential Parenting Tips Based on Science (and What I’ve Learned So Far) 』。日本向けに15個のTipsが間引かれたようです。
内容としては納得できるものが多いのですが、専門性や情熱をあまり感じられないだけに、読んでしばらくすると何も印象に残っていませんでした。
いろいろな方法とその科学的根拠が広く浅く書かれているので、興味があることを探し、他の本で深掘りするような使い方がおすすめです。
自制心については、『マシュマロ・テスト』にさまざまな研究が紹介されています。子供を本好きにしたいなら『「与える」より「引き出す」! ユダヤ式「天才」教育のレシピ』が参考になるかもしれません。
実践困難な方法も
毎日8分間のマッサージを受けている生後4か月の赤ちゃんは、機嫌がよく、不安とストレスが少なく、注意力が高く、睡眠パターンが整っている傾向があるそうです。しかし、どんなマッサージがいいのかは、ほどほどの力をかけ、弱すぎてもいけなせん、としか説明がありません。どんな力加減なのかさっぱりわかりません。
インドではベビーマッサージの伝統があるそうで、ネットの動画を参考にしても、と著者がいうので検索すると、見てみると笑っちゃうくらい激しいんです。とてもマネできない!!(検索してみてください!)
アメリカンな感覚では、この激しさを見よう見まねでやってしまうのでしょうか。
ちなみに手で触る体験をさせてあげようという例では、スーパーの買い物中に玉ねぎの皮やアボカドを触らせることを提案しています。日本のスーパーで買いもしない野菜を赤ちゃんに触らせたら他のお客さんはいい気がしないでしょう。
科学的でない最後の項目が一番印象的だった
タイトルで‟いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる”55の方法と言いながら、最後の55番目の項目はなんら科学的な根拠はありません。科学的根拠がある方法は、正確には54の方法です。55番目は著者が自身の経験から育児のすばらしさを書いたあとがきです。ですが、著者の魂がこもっているからか、この項目が一番印象に残りました。
その中には、「1日に何度も、声を出して笑い、遊び、強烈な愛情と自尊心と喜びを感じ、心から驚かされます。それに、こんなに人から愛されることは、めったにある経験ではありません」とあります。
もちろん、赤ちゃんは生存のために身近な大人を愛するようにプログラムされているわけですが、その強烈な愛情や、子供がもたらしてくれた新しい生き方に対する喜びに共感しました。
著者:トレーシー・カチロー
発行日:2016年11月17日
対象年齢:0歳~5歳
おすすめ度:★★★☆☆
面白い度:★★☆☆☆