『子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!』感想【0歳~9歳】

「3歳、7歳、10歳で決まる!」と言いながら、帯には「実は大人の才能もまだまだ伸びる!」とあり、本文を読む前にいきなり矛盾しているかのような本書。

10歳頃まではその後の人生に大きな影響をもたらす極めて大事な時期とはいえ、10歳以降でも脳は発達するし、人生を切り開く変化を起こすことはできるということを言いたいのだとは思います。

本書は、子どもの脳の発達に合わせて、その時々ですべきことを説明するとしています。しかし、それらすべきことは基本的には脳の機能をしっかり働かせるための習慣なので、たとえ最適な時期が過ぎてしまっても、脳のパフォーマンスを(幼少期ほどではなくても)向上させるそうです。

内容は奇抜なところはなく納得できるものでした。

特に本書で強調しているのは、好きなことを自分からやることで脳の機能が高まる、という点です。

目から入った情報は理解する前に、感情のレッテルが貼られるそうです。レッテルが「好き」「面白そう」などのプラスの感情の場合、脳の機能がよく働きます。

レッテルが貼られえた情報は、前頭前野で理解したり判断をしたりし、自己報酬神経群に伝わります。自己報酬神経群は、「自分への報酬」=「ごほうび」によって機能する神経細胞群で、「ごほうび」とは、自分でやろうと考えたことを成し遂げることだそうです。自己報酬神経群は、自主性や主体性を持ったときに、脳の思考力や記憶力を高めるそうです。

子供自身が面白いと思うことに主体的に取り組み、やり抜き、達成感を感じること。それが、何よりのご褒美になります。親がいちいち褒めなくてもいいのだと思います。 「自分でやる!」という気持ちや、「できた!」という達成感を繰り返すことで、子供の脳がすくすくと発達していきます。

子どもの脳がぐんぐん育つ 「やる気脳」を育てる』にも同様のことが書かれています。目標の達成→ドーパミンが出てやる気がでる→さらなる目標→達成してドーパミン、という繰り返しで、 脳機能が向上していく「やる気回路」 ができるそうです。

ネガティブなレッテルを貼られたことに取り組むのは、脳の機能がよく働かず、結果として学習効果が低くなってしまいます。

タイトルにもある年齢(3歳、7歳、10歳)は、脳の発達を背景に区分しています。

脳神経細胞の数は、0歳から3歳まで増加し続け、3歳から4歳をピークに、7歳頃までは少し減るそうです。この「間引き現象」については、3歳から7歳の間に脳の情報伝達回路がつくられるため、回路の形成に邪魔な細胞を消しているという説があります。7歳から10歳以降は、脳神経細胞間の情報伝達回路を発達させる段階になり、大人の脳になっていくそうです。

0歳から3歳の脳は神経伝達回路が十分に発達する段階にないので、無理に情報を詰め込んだり、具体的な成果を求めてやらせることを否定しています。未熟な脳に負担をかけて「学習はつらい」という記憶がつくられてしまうと、結局、勉強嫌いの子どもになってしまうそうです。

7歳から10歳は、どんどん勉強していい時期としています。同時期は、自己報酬神経系が発達する時期でもあるので、主体性が大事になります。親から何かをしなさいといわれるのを嫌がるし、脳の機能も落ちてしまいます。

0歳~3歳は「心が伝わる脳をつくる」、3歳~7歳は「勉強やスポーツができる能をつくる」、7歳~10歳は「本当にあたまのいい脳をつくる」ことが目標になるそうです。

それぞれの年齢区分で取り組むべきことが書いてあります。好きになる力や自主性の他に、「共感」や「やり抜くこと」なども強調しています。

やり抜くことの重要性は、 アンジェラ・ダックワースが 『やり抜く力 GRIT』で解説しています。

タイトル:子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!
著者:林成之
発行日:2011年1月30日
対象年齢:0歳~9歳
おすすめ度:★★★☆☆
面白い度:★★★☆☆