育児の大きなゴールが「自立」「自律」だとすると、社会で働くことのできる能力を身につけることはとても重要です。子供が社会で活躍できるように、十分な学力や社会性を身につけさせたいと親が思うのも当然です。
ですが、生きていくための基礎となる家事能力を身につけることに対しては、あまり熱心でない家庭が多いようです。清潔な環境や栄養のある食事がなければ、健康的な生活は送れません。
伝統的な社会では、子供は家事を模倣し、うまくできればご褒美としてその家事を自分の仕事にできるそうです。人間は歴史的にそのようにして、社会の一員として役割を担ってきたと考えられます。
つまり、家事を模倣し、それを自分の仕事にするということは、子供にとってごく自然なことであり、成長に必要なことなのです。
いつからお手伝い(家事)をさせるか?
赤ちゃんや幼児は大人のマネが大好きです。なんでも自分でやりたがります。もちろん家事にも興味があります。興味をもったらできる範囲でやらせてあげましょう。うちの子は、1歳の頃に机を拭いたり、卵をかき混ぜたり、洗濯物を干したりしていました(「赤ちゃんのベビーハンガーは必要!バスタオルハンガーがあるとお手伝いしやすい」参照)。もちろん、常にではないです、
親にとっては時間がかかるし、余計な手間が増えるので自分でやってしまうのが楽だし早いんですよね。それでやらせないでいると、子供が成長して戦力になる頃には、家事は子供の興味の対象ではなくなっていて、「うちの子はお手伝いをしない」ということになってしまいがちです。
そうならないためには、子供が家事をやりたがる時は、できるだけやらせることです。子供は他の家庭を知らないので習慣化してしまえば、それが当たり前と思います。
子供にお手伝いをさせようとする親は多くいると思いますが、家族というコミュニティで共同生活している一員である以上、家事をするのは当たり前です。むしろ、子供ができることに限界があるので、その分を親が「お手伝い」してあげるのです。
ご褒美をあげるべきか?
子供が家事をするのは、子供がひとりで生きていく力を身につけるためでありますし、家族の一員として当然のことでもあります。
だから、お手伝いに対してお駄賃やご褒美をあげるべきではありません。やって当然のこととして習慣化すべきです。(それよりも「お手伝い」という言葉すら使うべきではありません。手伝っているのは親なんだから。)
ある程度できるようになったら、クオリティには多少目をつぶって子供に任せましょう。 それが何よりのご褒美です。
家事をすることによる効果
『坂本廣子の台所育児 一歳から包丁を』には、生きることの基本である食べることをまったく自分でできなかったり、人が作ってくれたことの苦労を思いやることができない子供を育てるのはちょっとおかしいのでは?とあり、私もその通りだと思いました。
結婚してパートナーが主に家事をする場合もあるかもしれませんが、家事ができない人にはそのありがたさは分かりません。ご馳走になっても、作った人を思いやれなければ味わいも感謝も浅いものになるでしょう。食べることは単に栄養をとることでなく、人間にとってはコミュニケーションの機会です。料理ができることは、社会の一員として生きていく力をつけることでもあります。
料理は作るものを企画して、段取りを考えて、他の人を喜ばす料理というもは、脳にもいい影響がります。『夢をかなる脳』には、地頭のよさで重要になる「ワーキングメモリ」を向上させる効果が期待できるとしています。レシピを覚えて記憶に基づいて作る、3品以上作る、自分なりの工夫をする、などを意識するとよいそうです。